
山口情報芸術センター[YCAM]で2025年6月8日に「シャドーイング」にまつわるトークを行い、6月7日から13日にかけて《シャドーイング(トミゴロウ)》と新作の《マウイ饅頭》の展示を行います。
新作はアーティストの富田七海さんとのコラボレーションワーク。富田さんとYCAMキュレーターの見留さやかさんのお力添えにより、ずっとやりたかった「マウイ饅頭」の復元と現物展示が実現しました。
ぼくにとっては出身地・山口市での初めての展示にもなります。
シャドーイング行為としての饅頭制作とは何か。短い会期ですが、皆さまぜひご覧ください。
info:
原田裕規トークイベント関連展示
シャドーイング
会期:2025年6月7日(土)– 6月13日(金)
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
料金:無料
本展では、山口市とハワイ・ホノルル市の友好都市提携に基づき、アーティストの原田裕規氏による、山口からハワイや対馬など各地に渡った人々を題材にした映像作品「シャドーイング」と、海を越えて独自に発展した「マウイ饅頭」を再現する新作を展示します。
作品について
《シャドーイング(トミゴロウ)》では、ハワイの日系アメリカ人をモデルに原田が制作した「デジタルヒューマン」が、山口から対馬に移り住んだ漁民にまつわるエピソードを語っています。その表情はフェイストラッキング技術によって作者の原田と連動しているため、彼らの像は原田のアバター(化身)といえるでしょう。
映像には日英字幕が付されています。英語字幕の多くはハワイ・ピジン英語と呼ばれる混成語です。本作におけるピジン英語は19世紀以降にハワイに渡った人々が発展させたもので、英語、日本語、中国語、ハワイ語など、さまざまな言語が混合して成立しています。その一方の日本語字幕には、山口の方言が登場します。
さらに、映像には2種類の「声」があてられています。一方はハワイの日系アメリカ人、もう一方が原田自身の声です。物語を朗読する日系アメリカ人の声を原田が復唱(シャドーイング)し、その原田の顔の動きをデジタルヒューマンが追跡(シャドーイング)するという、二重の「シャドーイング」が行われているのです。
さらに本展では、原田が新たに制作した「マウイ饅頭」の展示が行われます。
ハワイ・マウイ島では「クリスピー饅頭」と呼ばれるローカルフードが親しまれていました。日本では蒸して調理されることが一般的な饅頭ですが、マウイではオーブンで焼かれることにより、サクサクした食感のクリスピー饅頭が生まれたのです。さらに餡の風味も、小豆味や芋味に加えて、ココナッツ味、リンゴ味、ピーナッツバター味など独自の広がりを見せています。
しかし、そんな饅頭を提供していたマウイの老舗店が惜しまれながらも2024年に閉店してしまいました。それを受けて原田は、食の相互作用をテーマに制作するアーティスト・富田七海に饅頭の再現を依頼。残された資料や原田の記憶を頼りに、その味や食感を富田が「シャドーイング」することにより、一度は消滅しかけた「マウイ饅頭」が作品として復活することになりました。