原田 裕規 Yuki Harada

Shadowing
August 16th – September 10th, 2022, THE POOL (Hiroshima)

Shadowing
2022年8月16日 – 9月10日、THE POOL(広島)

このたびTHE POOLでは、2022年8月16日(火)から9月10日(土)まで、原田裕規(1989–)の個展「Shadowing」を開催いたします。

原田は2019年から断続的にハワイに滞在し、独自に発展した「ピジン英語」に代表されるトランスナショナルな文化的モチーフを収集してきました。また、2021年からはCG作品の制作を開始。同年に金沢21世紀美術館で33時間に及ぶ長編CGアニメーション作品《Waiting for》を発表し話題となりました。
本展で公開するのは、近年の作家によるふたつの取り組みが融合した新作《Shadowing》です。

《Shadowing》は、作家がハワイで知り合った日系アメリカ人たちをモデルに、最新のデジタル技術で制作したデジタルヒューマン/映像作品です。作中の登場人物が語るのは、日系アメリカ人がハワイで代々語り継いできた「オバケ・ストーリー」。
本作では、ハワイ在住の日系アメリカ人がピジン英語で発音した音声を原田がシャドーイングし、その表情の動きをフェイストラッキングによってデジタルヒューマンが「シャドーイング」しています。

そのため、三者の声と動きには常にズレが挟まれることになります。一方で、彼らの声と動きが時折重なったとき、心を持たないはずのデジタルヒューマンに私たちは感情を読み取ってしまいます。果たして、これは「誰の」感情なのでしょうか。

原田にとって《Shadowing》は《Waiting for》に続く1年ぶり・2作目のCGアニメーション作品です。
ソフトウェアの無償提供やスマホアプリ化などにより、近年民主化が進んでいるデジタルヒューマン/フェイストラッキング技術を用い、移民がもたらしたハワイの民間伝承を翻案すること。それによって《Shadowing》は、トランスナショナルな人間の生と「影」の関係を描き出しています。


山口に生まれ広島で育った原田裕規は、2019年に訪れたハワイのビーチで、彼にとって馴染み深い日本のローカルな地名が刻まれた墓石が砂に埋もれている様を見て衝撃を受けたという。2022年8月から9月にかけて、広島のアートスペース「THE POOL」で開かれた個展「Shadowing」は、そのときの衝撃を経て原田が継続的に続けてきたハワイにまつわる歴史的・地政学的なリサーチが結実したものだ。ちなみに、この展覧会の出品作は個展と同名の作品1点のみである。ゆえに本稿は、必然的にその作品のレビューとなることを断っておく。
個展会場の中央には、縦長の仮設壁がスクリーンとして据えられていた。そこに映し出されるのは白髪の男性のバストショットだ。顔に刻まれた皺の様子から推察するに、年の頃は60代あたりだろうか。彼の顔貌はまるでトーマス・ルフの写真のように拡大されており、濃い陰影に彩られた鼻梁が強い存在感を放つ。[……]

「オバケだから言えること。塚本麻莉評「原田裕規個展 Shadowing」」『ウェブ版 美術手帖』(2022.12.13)より


Shadowing
August 16th – September 10th, 2022
THE POOL (2-13-18 Higashi-Sendamachi, Naka-ku, Hiroshima City, Hiroshima)
14:00-19:00
Closed on Sunday Monday and Holidays

Exhibition Website / 展覧会ウェブサイト
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