原田 裕規 Yuki Harada

京都・熊本・東京を巡回してきた「LOVEファッション──私を着がえるとき」展、無事にすべての会期が終了しました。
原田のシャドーイングは会場ごとに全て異なる展示方法になりましたが、「舵の曲がったボート」について語るトミゴロウが会場の最後に置かれる構成は共通していました。

シャドーイングは「声」を用いて「声」に向き合ってみた作品です。
日系アメリカ人の声を基点に、原田の声とデジタルヒューマンの顔が二重・三重に追跡する構造になっています。声に表れる逃れがたい「私自身」と、それでもなお私自身から逃れようとする人間の意志を同時に扱おうとしました。

この「私自身」をめぐる2つの相反する運動は「私を着がえるとき(In Search of Myself)」という副題の付いた展覧会のテーマと共鳴するものでした。
この展覧会は、筆跡に表れる逃れがたい/逃れたい「私自身」(横山奈美)から始まり、さまざまなファッション/アートにおける同様の問いを経由して、最終的には声に表れる逃れがたい/逃れたい「私自身」(原田裕規)で終わるという会場構成になっていました。

単純な自分語りでも私小説でもなく、さまざまな政治的・身体的な場としての「私自身」をめぐる問いが、筆跡から身体へ、身体から衣服としての家(AKI INOMATA)へ、家から声へと自在に展開していくのを感じ、目を見開かれる想いがしました。それもあって、この展覧会の一部を担えたことがとても嬉しかったです。

展覧会のチームもとても楽しいメンバーでした。京都国立近代美術館の牧口さん、渡辺さん。熊本市現代美術館の池澤さん。東京オペラシティアートギャラリーの福島さん。京都服飾文化研究財団の小形さん、石関さん、新居さん、五十棲さん。デザイナーの岡﨑さん、田岡さん。会場構成の井上さん、石毛さん、楊さん。伏見工芸の朝倉さん。東京スタデオの楠原さん。参加作家のINOMATAさん、松川さん、横山さん。……まだまだ書き切れない人たちも含めて、全員が各自の持ち場で専門性を発揮できる絶妙な体制になっており、いつまでもこのチームで展覧会づくりをしていたいと思わされるほどに楽しい1年半でした。
設営のために京都と熊本で滞在した日々も本当に楽しかった。

「LOVEファッション」チームの皆さま、展示をご覧いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
展覧会は終わってもカタログは残っているので、カタログもぜひご覧いただけますと幸いです。

info:
LOVEファッション──私を着がえるとき
会期:2025年4月16日(水)– 6月22日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー[ギャラリー1, 2]

LOVEファッション──私を着がえるとき
会期:2024年12月21日(土)– 2025年3月2日(日)
会場:熊本市現代美術館

LOVEファッション──私を着がえるとき
会期:2024年9月13日(金)– 11月24日(日)
会場:京都国立近代美術館

展覧会カタログ
https://www.kci.or.jp/love/goods/index.html