原田 裕規 Yuki Harada

日本ハワイ移民資料館を舞台に、アーティスト・原田裕規(1989–)の新作展を開催します。
本展で発表する《Shadowing》は、周防大島とゆかりの深い「ハワイ移民」や島出身の民俗学者・宮本常一(1907–1981)の著作をモチーフとした映像作品。本作では、ハワイの日系アメリカ人に扮した「デジタルヒューマン」としての作家が、日系人に伝わる民間伝承に基づくさまざまなエピソードを語ります。

「やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」
メッセージ性の強い展覧会名は、宮本常一による聞書「梶田富五郎翁」からの引用。昭和25年に宮本が対馬で出会ったひとりの老人、梶田翁の台詞です。翁の人生の実感が集約されたこの言葉には、前進する人間の性(さが)を肯定する宮本のまなざしが内包されています。

周防大島をはじめとする各地からハワイへと渡った人々は、多くの困難を乗り越えて現地で社会を築き、ピジン英語に代表されるトランスナショナルな文化を形成するに至りました。そのような彼/彼女らの歩みに、人間の力強い本性(ほんせい)を見出した原田は、梶田翁-宮本の象徴的な台詞を展覧会名に据えることで、自作に新たな文脈を呼び込みます。

多くの島民がハワイに旅立った歴史をもつ周防大島の歴史資料を公開し、今なおハワイと日本のハブとして機能する日本ハワイ移民資料館は、大正期の和洋折衷建築(旧福元邸)も見どころのひとつです。
豊かな歴史を体現する無二の空間において、史実とフィクションが呼応し、新たなナラティブが誕生する瞬間をお楽しみください。

日本ハワイ移民資料館


info:
原田裕規 個展 やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす
開催日時:2023年6月20日(火)– 7月9日(日)9:30~16:30 ※月曜休館
場所:日本ハワイ移民資料館(山口県大島郡周防大島町西屋代上片山2144)
入館料:大人400円、小・中学生200円

主催:周防大島地人協会
協賛:大島国際交流協会
後援:周防大島町教育委員会、一般社団法人周防大島観光協会
助成:公益財団法人朝日新聞文化財団、公益財団法人エネルギア文化・スポーツ財団、公益財団法人きょうと視覚文化振興財団
協力:泊清寺
キュレーション:塚本麻莉(高知県立美術館主任学芸員)

関連イベント
① アーティストによるギャラリートーク
原田裕規による館内ギャラリートークを行います(要入館券)
日時:6月20日(火)、7月9日(日)いずれも14:00〜

② 対談:畑中章宏 × 原田裕規
今年5月に『宮本常一 歴史は庶民がつくる』(講談社現代新書)を上梓した民俗学者の畑中章宏氏と原田による対談を行います
日時:7月2日(日)14:00〜
料金:500円(要別途入館券)
定員:15名(当日先着順)

原田裕規が日本ハワイ移民資料館で個展を開催へ。「ハワイ移民」テーマに新作展示(『美術手帖』)
原田裕規 「やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」(『Tokyo Art Beat』)